近頃、南アフリカワインをバーやレストランでよく見かけるようになってきましたよね。南アフリカでは年々ワインの生産量を上げており、2015年には生産量が1,131万ヘクトリットルで世界8位になりました。
南アフリカと聞いて想像するのは、高原やサバンナ、ジャングル、砂漠といったダイナミックな自然のイメージなのではないでしょうか。実はそういった大自然と共に、ぶどう栽培に適した気候や国土があるため、ワイン造りが盛んに行われているのです。
ここでは、人気がジワジワ上昇している南アフリカワインの美味しさの秘密を歴史から探ってお伝えします。記事の終わりに、おすすめの南アフリカワインの紹介もありますので、ぜひ参考になさってください。
南アフリカワイン
美味しさの秘密を探る歴史の旅
南アフリカワインの歴史①
南アフリカワインが初めて造られたのが1659年2月2日。350年以上も前から造られており、ワイン造りの歴史が浅いニューワールドと呼ばれる国の中では、比較的古い歴史を持っています。
おもしろいことに、初めてワイン造りをしたオランダ人ヤン・ファン・リーベックの日記の中には、”Today, praise the Lord, wine was pressed for the first time from Cape grapes.”「神を讃えよ。今日、初めてケープのぶどうが搾られた」と記されています。世界でもあまり例を見ない、最初に南アフリカワインが造られた日付が記録されているのです。
そして、フランス名醸地からの入植者が技術を伝え、現在の南アフリカワインの基礎を築き上げています。
南アフリカワインの歴史②
1795年フランス革命戦争の最中、オランダ領だったケープ植民地がイギリスに占領されました。その後ナポレオン戦争が起こり、フランスワインが輸入できなくなったイギリスでは、植民地である南アフリカのワインが、民衆に親しまれるようになります。程なくしてヨーロッパ各地で南アフリカワインの輸入が広まりました。
ところが、1861年イギリスとフランスの国交回復により、イギリスの酒税法がフランスワインへの税金を免ずるとの改正があったため、フランスワインがどのワインよりも市場を拡大していきました。
それに追い打ちを掛けるように、1866年にフィロキセラの被害が南アフリカに及んでしまうと、銘醸ワイン、コンスタンシアを含む多くのワイナリーがワイン造りを断念せざるを得ない状況になり、一気に南アフリカのワイン産業は低迷してしまいます。
※フィロキセラとは『葡萄根油虫』という和名で、その名の通り葡萄の根っこへ寄生して、葡萄の樹を腐らせてしまうワインの天敵です。元々は北米に生息していましたが、世界の交易が盛んになると北米から葡萄の苗木が持ち込まれ、それにフィロキセラが付着していてヨーロッパ全土に広がってしまったのです。
南アフリカワインの歴史③
フィロキセラの被害も収まりすでに復活の兆しがあった1918年、南アフリカワインの歴史を大きく変える出来事が起こりました。それは、南アフリカワインの過剰生産抑制と価格安定を目的に、政府がKWVを創設したことです。KWVとは、南アフリカ醸造者協同組合連合の略称で、1998年に民営化されるまで続きます。
政府が組合の組織を作るとなると何か裏があるのではないかと考えてしまいますが、このKWVは南アフリカワインのブランド立て直しに寄与しています。例えば、全てのケープ産ワインの市場と価格を統制したり、1925年にステレンボッシュ大学のアブラハム・イツァーク・ペロルド教授に支援し、新しいぶどう品種ピノタージュの開発援助を行っています。
※ピノタージュとは、ぶどう品種ピノ・ノワールとエルミタージュ(サンソー)を交配させた品種で、発育が早く高い糖度が得やすく病害に強い特徴があります。ピノタージュのワインは、濃い鮮やかな赤色で、強い酸味の中コクがしっかりあり、フルーティな味わいが口一杯に広がります。
2004年には、西ケープ州のフィンボスと呼ばれる植生地域が世界遺産に登録されました。南アフリカワインのほとんどがその保護地域内で造られているため、農薬を減らし自然環境を保護しながら、ぶどう栽培やワインの製造を行っています。現在では、人と自然に優しい南アフリカワインになっているのです。
南アフリカワインのおすすめ
南アフリカではカベルネ・ソーヴィニヨンと並んで称されるほどのぶどう品種である、ピノタージュで造られた赤ワインを1本ご紹介します。
ドメーヌ・ブラハム・ピノタージュ 2013
(Domaine Brahms Pinotage South Africa 2013)
産地:ケープタウン郊外のパール地区
ぶどう品種:ピノタージュ100%
容量:750ml
アルコール度数:15%
栓のタイプ:コルク
合う料理:マグロのステーキ
果実味豊かで、しっかりとした酸味が特徴な味わいの中に上質なタンニンを感じます。コクもしっかりしており、味付けが少し濃い目のマグロステーキや、黒こしょうやスパイスが効いたお料理にピッタリ。
いかがでしたか。今回は、南アフリカワインの美味しさの秘密を歴史から遡りお届けいたしました。
350年前のオランダ植民地時代にワイン造りが始まり、のちのイギリス植民地時代に繁栄。一旦低迷した後、政府の介入で協同組合ができ、ブランドを立て直すことができました。さらには品種改良、自然に優しい栽培法などが功を奏して、現在の南アフリカワインの生産に至っています。
いつも飲んでいるワインの歴史的背景を知ると新たな発見があり、ワインの味に深みが増しますよね。あなたも南アフリカの歴史に思いを馳せながら、ぜひ南アフリカワインをいただいてみましょう。
さあワインがあなたを待っていますよ!今日はどのワインで乾杯しましょうか。
まとめ
南アフリカワインが美味しい歴史的理由は
・350年以上も前から造られている
・イギリスを初めヨーロッパで持てはやされた時代があった
・低迷期を乗り越え、政府介入の組合がブランドの立て直しを図った
・ピノタージュの品種改良を行なった
・自然環境保護のため、減農薬でぶどう栽培をしている