遺留分で相続争い!財産ないなら考えておきたい遺産の行方

遺留分で相続争い!財産ないなら考えておきたい遺産の行方
「うちには財産なんてないから」、「家族の仲は良いしうちはモメないから大丈夫」。そう思っているなら大間違い。分ける遺産がないからその遺産を巡って争うのです。親の介護で大変な思いをした子供は少しくらい多めにもらいたいと思いますし、同居している子供はこの家を自分が相続したいと思うものです。

今は家族仲が良くても、不平等によって不仲になってしまうことはよくあります。我が家の相続には無関係と思わず、遺産の行方について考えておくことをオススメします。

特に、相続人には「遺留分」という最低限遺産をもらえる権利があります。この遺留分を巡って争いになることが多く、また、遺留分について勘違いしている人もいるため、ここでしっかりと知っておきましょう。ケースを取り上げながらお伝えしていきます。
 

 

遺留分で相続争い!
財産ないなら考えておきたい遺産の行方

 
裁判所の平成25年司法統計年報によると、裁判で争っている案件のうち、遺産総額5,000万円以下が全体の75.1%。中でも1,000万円以下は32.3%。裁判になっていない案件を入れたらもっと多いことでしょう。それでも我が家に関係ないと言い切れますか? ちょっとドキッとしますね。

相続争いは不平等から起こります。子供が1人だけならともかく、2人以上いる場合はどうしても他の兄弟姉妹に対する感情が出てしまいます。

親は同じように子供に愛情を注いで育てたでしょうが、子供からしてみたらそんなことはありません。あなたが親であり、子供であるなら、その立場になって考えてみてください。口に出すほどではないけれど、何かしら思い当たることがあるのではないでしょうか。

今は些細な感情かもしれませんが、今後親のことで兄弟姉妹の誰かだけに負担がかかるとしたら、不平等という感情は大きく育ってしまいます。家族関係において心の中にわだかまりを清算する場所が、相続の場でもあるのです。

また、遺産に不動産がある場合は、思うように分けることができずに争ってしまうことがあります。遺産を分けるときに出てくる問題が「遺留分」。相続人なら最低限相続できる割合です。この遺留分とはどのようなものなのか、まずは遺留分とは何かについて知っておきましょう。

 

遺留分とは

先にもお伝えしましたが、遺留分とは相続人が最低限相続できる割合です。遺言によっても侵害することのできない権利で、相続人が相続について保証されている相続財産の割合でもあります。つまり、相続人だったら最低限の遺産をもらう権利が保障されているということです。

ここで注意点が1つ。「相続人だったら」ということ。

そもそも相続人ではない人には、遺留分は関係ありません。例えば、父が死亡したときに、母、長男、長女、長男の子(孫)がいた場合、孫がそれにあたります。母、長男、長女は相続人ですから遺留分はありますが、孫はそもそも相続人ではありませんから、遺留分はないということです。

もし、長男が父より先に死亡している場合は、孫が代襲相続人(長男の代わりに相続する人)になるため、その場合は孫にも遺留分があります。

ただし、相続人ではあるけれど対象外になる人がいます。それは、死亡した本人の兄弟姉妹です。

例えば、本人夫婦に子供がいなくて、父母もすでにいない場合、相続人は配偶者と本人の兄弟姉妹になります。その場合、配偶者には遺留分があるのですが、本人の兄弟姉妹には遺留分がありません。残念ならがそう法律で決まっているので仕方ありません。

ちなみに、胎児は相続人ではありませんが、生まれてきたら、そのときから相続人になります。

 

遺留分の割合

遺留分は相続人に与えられたものですが、どれくらいの割合があるのかというと、誰が相続人なのかによって違ってきます。

  • 配偶者、子(代襲相続人を含む)、父母や祖父母の場合は、法定相続分の1/2。
  • 相続人が父母のみの場合は、父母の遺留分は法定相続分の1/3。
  • 兄弟姉妹は遺留分なし。

ですので、父の相続で相続人が配偶者、長男、長女の場合だとしたら、母の法定相続分が1/2。そのさらに1/2(つまり1/4)が遺留分になります。長男と長女は、母の法定相続分の残りの1/2を2人で分けますので、それぞれ法定相続分は1/4。そのさらに1/2が遺留分なので、長男も長女もそれぞれ1/8が遺留分になります。

遺留分は法定相続分に対しての割合ですので、まずは誰が相続人で、法定相続分がどの位あるのかが分からなければ、遺留分がどれくらいの割合になるのかもわからないということです。

 

遺留分は主張すべきものかどうか

遺留分を侵害してはいけない、必ず遺留分を相続させなければならない、遺留分はもらわなければならないと思い込んでいる人がいるのですが、そんなことはありません。

仮に、死亡した母の相続で、長男と長女が相続人だとします。母と同居していた長男が家を相続すると長女にはわずかな預貯金のみになってしまう。遺留分にも満たない遺産分割に「納得いかない」と長女が遺留分を主張すれば、主張された側(長男)は、主張した側(長女)に遺留分の侵害額(遺留分との差額)を渡すことになります。

ですが、長女が「遺留分に満たないけど別にこれでいい」と納得しているのであれば、長女は遺留分を主張する必要はありません。

遺留分というのは主張すべきものではなく、主張する権利があるというものなので、その判断はその人に任されています。

ですから、遺留分相当額を必ず相続させなければならないわけではありません。遺留分に満たない分割になるとしても、その人が遺留分を主張する可能性があるというだけです。ここを勘違いしている人が多いので、気を付けてください。

ただ、仮に遺留分を主張された場合にどのような対策をとるかという問題は、別途考えなければなりませんが。

 

遺留分の主張方法と時効

さて、その遺留分ですが、どのように相手へ主張すればよいのでしょう。次のようになっています。

遺留分が侵害されている者は侵害している者に対して遺留分減殺請求(いりゅうぶんげんさいせいきゅう)により遺留分の返還請求ができる。ただし減殺請求権は、遺留分権利者が侵害されていることを知った時から1年または相続の開始の時から10年で時効により消滅する。

とまあ、こんな感じです。先の長女の件でいうと、遺留分が侵害されている者(長女)は、侵害している者(長男)に対して、遺留分減殺請求(つまり遺留分の請求)をすることができます。実務上、この請求は内容証明で行います。

そして、請求できるのは、長女が遺留分を侵害されたことを知ったときから1年です。それを超えてしまうと時効になり、主張することができません。また、遺留分が侵害されていることについて知らずにいたとしても、相続開始の時(大抵は母が死亡したとき)から10年経過したら、時効により主張することができません。

仮に、長女が長男に対して遺留分減殺請求をしたら、長男は自分の財産から長女に支払うことになります。死亡保険金の受取人などで長男に現金が入ってくるならともかく、自宅は売ることができないし、かといって今ある預貯金を渡してしまうと、今後の生活に支障をきたしてしまうこともあります。

遺留分は相続人の権利ですから、主張するかどうかは自由ですが、遺留分減殺請求をするということは、人間関係を破壊する前提で行うのだということを理解しておきましょう。自分の家に兄弟姉妹から内容証明が届き、「お金返せ」という内容を見て笑顔でいられるのでしょうか。親族の今後の関係まで考えたうえでの判断が必要だということです。

 

事前に遺留分の対策を考えておく

自分の相続の時に遺留分の割合がどのくらいで、遺留分を主張されたときには現金が必要になるかどうかが分かっていれば、事前に対策をとることができるかもしれません。反対に、自分が遺留分を主張する立場になるのであれば、その分に対してどうするのかも考えておかなければなりません。

例えば、遺言書の作成、死亡保険金の活用、生前贈与など、ケースに応じて対策はいろいろあります。

遺産がある程度あれば分けることができますが、自宅とわずかな預貯金などの場合には、遺留分という問題が発生してしまいます。いわゆる「うちには大して財産なんてないから」という家に起こりがちだということです。

そして相続でもめた人はみんなこう言います。「まさかうちがもめるなんて」、「うちは家族仲が良かったハズなんだけど」、「お金ってホントに怖い」、「まさかあの人がそんな人だと思わなかった」と。

 

遺留分について考えおくということは、法定相続人と相続割合を考えるということです。そのときに自分の財産にはどんなものがあって、どのくらいの額があり、誰がどの位相続するのかを見ていけば、遺留分についての対策も早い時期から行うことができます。

いつまでも家族が仲良く暮らしていけるように配慮するのは親の役目でもあります。子供であれば、どこまでお互いを思いやれるかに限ります。遺産を巡って争わないように、普段から家族でコミュニケーションはとっておきたいものです。

 

まとめ

  • 遺留分とは、相続人が最低限相続できる割合
  • 遺留分の割合は法律で決められている
  • 遺留分を主張するもしないも自由
  • 遺留分減殺請求をするということは、相手との人間関係を壊すことにもつながる
  • 事前に遺言書の作成、死亡保険金の活用、生前贈与などで遺留分対策をしておくとよい

 

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