公正証書遺言を”独りで公証役場に行って”作成する流れ

公正証書遺言を”独りで公証役場に行って”作成する流れ公正証書遺言を始めて作成する人にとっては、どのように公正証書遺言が作成されるのか不安に思う人がいます。公証人なんて会ったことないし、そもそもどのように作成されるのだろう。

そんな疑問をお持ちの方が多くいらっしゃいますので、ここでは公正証書遺言を作成するまでの流れについてお伝えしていきます。

 

 公正証書遺言を”独りで公証役場に行って”作成する流れ 

 

◆自分で公証役場に行って遺言書を作成する場合

①遺言内容を考える 

何を、誰に、どのくらい、相続させたいのかを考えます。公証役場に行ってから考えようとしても、公証人の予定もありますので、そんなにゆっくりしている時間はありません。持参用にメモにまとめおくとよいでしょう。

なお、遺言の内容を誰に行ってもらうのかを決めておくとよいので、「遺言執行者」についても考えておきます。

 

②公証役場を探す

公正証書遺言を作成する公証役場を探します。公証役場はどこにでもあるわけではないため、自分が住んでいる地域にはないかもしれません。インターネットで検索できるので探すのは簡単ですが、最低2回は公証役場に足を運びますので、行きやすい場所を選ぶのがよいでしょう。

なお、公証役場に行けない場合には、公証人が出張してくれます。その場合、公証人さんは同県しか出張できないため、同じ県にある公証人に依頼をします。ただし、出張料金や日当などがかかりますので、公証人への手数料がちょっと割高になります。

 

③電話で予約をする

公証役場を決めたら、まずは電話で予約をします。公証役場には公証人がいますが、場所によっては公証人が1人しかいな場合もあります。ふらりと訪ねても、公証人が不在の場合もありますので、必ず予約をしてからにします。

ちなみに、筆者がよく公正証書遺言の作成で行く千葉県の松戸公証役場と柏公証役場は、公証人が1人です。松戸市も柏市もそれなりに大きな市であるうえに、近隣の市からも来るため、かなり公証人が多忙です。

先日作成した公正証書遺言のときは、1カ月先でなければ予約が取れないほど混みあっていました。

 

④必要書類を準備する

公正証書遺言を作成するためには、次の書類が必要になります。しかし、すぐに取得できそうもないときには、先に書類を取得してから予約になることもあります。

(遺言者本人の必要書類)

  • 印鑑登録証明書(発行から3カ月以内のもの)1通
  • 住民票の写し(本籍・続柄のあるもの)1通
  • 戸籍謄本 1通

(遺言内容によって必要な書類)

  • 財産を相続人に相続させる場合には、遺言者と相続人との続柄がわかる戸籍謄本(3カ月以内に発行されたもの)1通
  • 財産を相続人以外の人に渡す(遺贈する)場合には、その人の住民票など(氏名・住所・生年月日のわかるもの)1通
  • 遺言する財産が不動産の場合は、土地・建物の登記簿謄本(法務局で発行)と固定資産の評価証明書または納税通知書(市区町村役場で発行)
  • 遺言する財産が不動産以外の財産の場合は、財産のメモ

(証人になる人の必要書類)

  • 証人(2人以上)の住民票の写し、または運転免許証の写し

不動産以外を遺言するときのメモというのは、○○銀行××支店の普通預金○円などがわかればよいので、預貯金通帳などのコピーは不要です。

ここで、どのような財産があるのか伝えることによって、その財産が明記されるわけです。明記されないものは、その他の財産として取り扱われるため、後々の手続きのことを考えると、出来る限り財産は明らかにしておきたいものです。

そして、証人の本人確認も必要ですので、証人になってくれる人の身分がわかるものも持参します。なお、証人は、利害関係人はなることができないため、身内はなれないと思ってください。友人・知人等でも証人になれますが、自分の財産のことですから、知られたくない人も多いでしょう。

その場合は、公証役場で証人を紹介してもらうことができます。弁護士や司法書士などが載っているリストの中から2人以上を選び、証人になってほしいと依頼をします。その場合は、すでに公証役場で身分が分かっていますので、証人に関する本人確認の写しは不要なケースがほとんどです。

 

⑤公証役場で公証人に遺言内容を伝える

必要書類を持って公証役場に行きます。受付で予約している旨と名前を伝えれば案内してくれますので、呼ばれたら公証人のところ(部屋)に行きます。そして公証人に、誰に何を相続させたいのか自分の遺言内容を伝えます。

このときは、証人は同席しません。遺言書を作成してもらうために自分の遺言内容を伝える段階なので、自分独りで出向きます。

なお、遺言書を作成してもらうには、証人2人以上の住所、職業、名前がわかっていないとなりません。②の必要書類で証人の情報がない場合には、公証人に相談し、指示を仰げば大丈夫です。

 

⑥公証役場より遺言書の準備が出来たと連絡が来る

遺言書の準備が整ったと公証役場から連絡がきます。このときに、公証役場で支払う手数料もお知らせしてくれます。

 

⑦証人と日時を決めて公証役場に予約をする

依頼した証人と公証役場に行く日時を決め、公証役場に連絡をして予約を取ります。遺言者本人、証人、公証人それぞれの都合もあるため、いくつか日時の候補を決めておくとスムーズです。

 

⑧公証役場で署名・押印をする

本人は実印を、証人は認印を持参して公証役場に行きます。呼ばれたら、本人と証人は公証人のいる部屋に行きます。このとき、本人に付き添いの方がいたら、その方には別室で待ってもらいます。

公証人から実印の提出を求められ、そのあと住所、氏名、生年月日を聞かれ本人確認がなされます。そして、遺言書を公証人が読み上げるのを、証人と共に確認し、間違いがなければ、原本に署名、押印をします。

 

公正証書遺言は、原本、正本、謄本の3通が作成され、原本は公証役場で保管、正本と謄本は遺言者に渡されます。正本は遺言者本人が保管、謄本は遺言執行者が保管するとよいのですが、どちらの効力も同じなため、必ず正本を遺言者が保管しなければならないものではありません。

ただし、金融機関の貸金庫に保管するのはやめましょう。貸金庫を開けるために、相続人全員の署名等が必要になるため、面倒だからです。

ちなみに、公正証書遺言を紛失してしまっても、最寄りの公証役場でコピーをもらうことができます。原本が保管されているので、正本や謄本と同じように再度取得することができるのです。

しかし、遺言者の生前には遺言者自身しか取得することはできません。遺言者死亡後は、相続人なら取得することができます(有料です)。

 

◆流れや注意点などのまとめ

公正証書遺言を作成するまでの流れや注意点を箇条書きでまとめました。

  • 自分で公証役場を探して予約をする
  • 事前に必要書類を自分でそろえる必要がある
  • 証人2人以上も自分で探して依頼しなければならない
  • 公証役場で取れる予約は短時間が多いため、相続対策や遺産分割対策などを公証人に相談する時間がないケースが多い
  • 遺言書作成日時の予約(本人、証人、公証人のスケジュールが合う日)の調整は自分で行う
  • 遺言書の作成当日には、事前に知らされている手数料を公証役場で支払う
  • 証人への依頼料が別途必要

自分独りで公正証書遺言を作成する場合は、市役所に行ったり、遠い本籍地から戸籍謄本を取得したり、法務局に行ったり色々行うことがあります。自分が主になって行動することがほとんどですので、それが難しいと感じる場合は、遺言書の作成している専門家に依頼する方法もあります。

 


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