親はまだ若いし両親ともに健在だし、父が亡くなった時には母が、母が亡くなった時には父が喪主を行うんだから、葬式のことなんて自分は知っておく必要がない。普通そう思いますよね。しかし今や30代、40代で喪主を行う人が多いのです。
まったく心づもりが無かったときに、まさか喪主になったり、遺族として葬儀を主宰しなければならない事態になったら、どうしたらよいでしょう。そのときに調べればよいと思っている人が多いのですが、現実は待ったなしに次々決めなければならいことばかり。
葬式でお焼香しかしたことがない、もしくはお焼香すらしたことがないというのなら、想像以上に分からないことだらけで大変な思いをします。そのようなときのために、葬儀の流れや行うことなどを知っておきましょう。
30代40代の喪主が増えている!イザ困らないための葬儀知識
もし仮に父親が死亡したときに、母親がパニック状態になってしまったり、母が認知症気味だったりした場合、誰が喪主もしくは喪主と同様の葬儀を主宰するのでしょうか。
通常は子どもが行うことになり、親戚のおじやおばが行うわけではありません。喪主の名前は母親にするとしても、その母が葬式の内容を決めたり、葬儀社に質問したり、お寺とのやり取りを行うことができないのなら、子どもが行うしかないのです。
初めてのことで良く分からない中、葬儀社から次々と「どうしますか」「これでいいですか」と決断を迫られ、準備しなければならないものも多くある中、親戚のおじやおばが口を出してくることもあり(お金は出さないくせに)、何だか大変な状態になります。
そこで、親が死亡したときからどのようなことを行うのか、大まかに見ていきましょう。ここでは父が病院で死亡したと仮定し、仏式の葬式を東京で行うケースでみていきます。
なお、全体の流れは「親が亡くなったときにやるべきこと~葬儀から相続手続の全体像」にありますので、ここではそこで取り上げなかった注意点を主にお伝えしていきます。
1.死亡直後
(1)搬送してもらう葬儀社を決め、搬送依頼をする
医療費の精算、病室の片づけをする中、葬儀社を探さなければなりません。「早目にご退室を」と病院から言われ、霊安室に長く安置していられる感じではないからです。到着までに時間がかかる場合があるため、早めに搬送の依頼をします。
(2)安置先を伝える
葬儀社が到着したら、安置先を聞かれます。自宅、自宅以外のどこかなど、伝えなければなりません。自宅以外の場合には、葬儀社の会館や民間の安置所などもあるので、葬儀社に相談するとよいでしょう。
ただし、搬送してくれる葬儀社の会館に安置する場合、その後の葬儀を別の葬儀社に依頼しにくくなります。
2.安置後
(1)葬儀内容を決め、見積書をもらう
葬儀費用がどの程度かかるか分からないと、頼みようがないものです。葬儀社も日時や場所、葬儀内容を聞かなくては行えませんので、見積書を作成することになります。
そこで、葬儀社からいくつか質問があります。菩提寺の有無、宗派、葬儀の場所、親族と参列者の人数、祭壇・料理・返礼品など葬儀の品目(グレード)、その他付加するもの(オプション)などです。
菩提寺にもすぐに連絡をし、僧侶の都合も確認しなければなりませんし、戒名をどうするかなども決めなければなりません。
(2)葬儀を行ってもらう葬儀社を決める
見積書をもらったあと、このままこの葬儀社に依頼するのか、別の葬儀社を検討するのか判断しなければなりません。
仮に、別の葬儀社にも見積書をもらって、比較検討したいと思ったとしましょう。実際にそれができるかというと、できないことが多いのです。理由は、葬儀の日時が決まらないと訃報の連絡ができないからです。つまり、葬儀社が決まっていなければならないということです。
そのような状況の中、悠長に葬儀社を比較検討している余裕があるかというと、なかなか難しいものです。つまり、比較検討することなく、何となく決めた葬儀社にすべてを依頼するケースが大半だということです。
(3)葬儀の準備をする
葬儀社が決まったら、遺影写真用の写真を葬儀社に渡したり、訃報の連絡をしたり、喪服の準備をするなど、やることがいっぱいあります。柩の中に入れたいものがあれば準備も必要ですし、会葬者に伝える“あいさつ”も考えなければなりません。
また、お布施、心づけなど、お金の準備も必要です。お布施は寺院次第なので金額は決まっていませんが、読経料、戒名料をあわせて「お布施」とし、それ以外に「御車料」(送迎しないなら)、「御膳料」(食事をしない場合)をそれぞれ渡します。
心づけは、いわゆるチップのようなもので、火葬場(民営の場合)、運転手、配膳人などへ3千円~5千円程度を渡します。必ず渡さなければならないものではありませんが、葬儀社に詳しく聞いたうえで判断することが必要です。
3.通夜から火葬・遺骨迎えまで
ここまでくると、あとは葬儀社が誘導してくれるからです。しかし、細かい点を聞かれるため、その辺りの注意点をお伝えしてきます。
(1)席次
当日、誰がどの席に座るのか決めておく場合があります。通常、祭壇に向かって右側に遺族が座り、左側が会葬者の席です。喪主の席は葬儀社が教えてくれますので、続いて故人に近い人から着席します。
配偶者、子ども(生まれた順)親せきという感じですが、子どもの配偶者はどこに座ればよいのだろう、親せきといってもどのような順番で・・・と分からないときには、葬儀社に聞けばアドバイスしてくれます。厳密に決まっているわけではないので、このような席次にこだわる親族がいなければ、当日の流れに任せるのも一案です。
(2)供花の並び順
頂き物のお花(供花)の並び順を決めます。故人に近しい人を遺影写真の近くに配置します。これも、葬儀社に相談すれば教えてくれますので確認してみましょう。
(3)弔電の読み上げ順
弔電をもらったときには、どの弔電をどの順で読み上げてもらうか決めなければなりません。弔電すべてを読み上げることができないときには、一部の人しか読み上げられないからです。また、誰から読み上げるのかも決めていきます。
(4)僧侶へお布施を渡す
僧侶が到着すると、葬儀社が喪主に僧侶へのあいさつを促します。このとき、お布施をお渡しすることがあります。そのタイミングは葬儀社に聞けば大丈夫です。
(5)喪主あいさつ
火葬場への出棺前に、喪主があいさつをします。今の気持ちを素直に話せばよいのですが、緊張してしまったり、上手に話さなければとプレッシャーを感じてしまったりする人も多くいます。
上手に話すことが求められているのではありません。ただただ、お別れに来てくれた会葬者へのお礼や親を亡くした今の気持ち、故人へのメッセージなどを伝えればよいのです。
それが簡単ではないので、皆さん大変な思いをするのですが・・・。
あいさつのサンプルがあります。葬儀社にもらうこともできますし、インターネットで探すこともできますから、それを参考にすれば大丈夫です。
(6)出棺と骨上げ
出棺するときに、喪主が位牌をもち、写真は親族が持ちます。火葬後のお骨は、2人1組で1つの遺骨を箸で骨壺に入れますが、こちらも席次と同じように故人に近い順で行っていきます。
(7)四十九日法要の日程
その場に、僧侶も親族もいるので、四十九日法要の日程を決めてしまいます。後日、改めて出欠を確認し、出席者分の料理の予約や引き物の準備なども行います。
まとめ
喪主もしくは喪主に近い立場で葬儀内容を決める経験がない人にとっては、ひとつひとつが分からないことばかりです。ですので、葬儀の全体像をまずは知り、葬儀の流れは把握しておきましょう。
今回は、東京で行う葬儀の流れでしたが、地域によっては火葬後に通夜を行ったり、通夜後に火葬を行ったりなど、流れが違う場合もあります。
また、慣習による違いもあるため、通夜ぶるまいを盛大に行う地域、ほとんど行わない地域などもあります。自分の親が住んでいる地域の葬儀を知っておくことが大切です。
そして、もし自分が喪主になるだろうと予測できるのであれば、今から葬儀社に数社から見積書をもらって、依頼する葬儀社候補を見つけておくことも視野にいれておきたいものです。