親が亡くなった時に行うことはとても多くあります。しかし、初めて行う人の場合、どのようなことを、いつまでに行えばよいのか分からないものです。筆者自身、今では相続団体の理事長をしておりますが、相続の仕事を行うようになる十数年前には、相続手続きなどまったく分かりませんでした。
分からないからこそ、何を行えばよいのかがわからないのです。ですから、まずは行う流れの全体イメージを知ることが大切です。そこで今回は、親が亡くなってから行うことの全体的な大まかな流れについてお伝えしていきます。
親が亡くなったときにやるべきこと~葬儀・相続・法要の全体像
親が死亡したときにやるべきこととしては、死亡直後の出来ごとから始まります。死亡する前の危篤については「家族が危篤になったときにやるべきこと」をご覧ください。
今は自宅で死亡するよりも、病院や施設で死亡するケースがほとんどですが、その中で圧倒的に多い病院での死亡をケースに見ていきます。なお、順番はその時々で前後しますので必ずしもこの順とは限りません。また、葬儀や法要など供養に関しては、宗派や地域により異なりますので、ここでは、葬儀については仏式で、場所は東京近郊での出来事として扱っていきます。
1.死亡直後
- 葬儀社に搬送を依頼
- 病室の片づけ
- 死亡診断書の受け取り、医療費の支払い
葬儀社にご遺体の搬送をしてもらうため早めに依頼をします。葬儀社が病院に到着するまでの時間がかかるからです。そして、病院が医療費を清算している間に、病室の片づけをし、医療費の支払いをして死亡診断書を受け取ります。
2.葬儀社到着後から通夜前まで
- 故人の安置先(搬送先)を伝える
- 安置後、葬儀社と打合せ
- 菩提寺がある場合は菩提寺へ連絡
- 葬儀社の決定(搬送してもらった葬儀社にするのか否か)
- 死亡診断書の記入、市区町村役場へ提出(7日以内)
- 訃報通知
- お布施の準備
葬儀社が到着したら、搬送先を伝え安置してもらいます。その後、見積書をもらうためにその葬儀社と打合せをします。菩提寺がある場合には、菩提寺のスケジュールが重要なので、連絡をして葬儀社とともに葬儀の日時を決めていきます。そして、死亡診断書を記入し、市区町村役場に提出します。
このとき、葬儀社が代行してくれるケースがほとんどです。葬儀の日時が決まったら、訃報の連絡をします。通夜が始まる前までには、寺院等へお渡しするお布施の準備も行います。
3.葬儀終了まで
- 納棺
- 通夜
- 葬儀
- 告別式
- (初七日法要)
- 最後のお別れ
- 出棺・火葬・(精進落とし)・骨あげ
- 遺骨迎え
- (精進落とし)
安置する場所によってはすでに納棺されている場合もありますが、そうではない場合は、通夜の前に納棺されます。葬儀の流れは、上記のように通夜後に葬儀の地域もあれば、通夜後に火葬して葬儀の地域や、通夜前に火葬して通夜の地域もあります。
最近では、告別式が終わったあとそのまま続いて初七日法要を行ってしまうことが多くあります。そして柩を会場の中央に安置し、お花等を手向けて最後のお別れをします。その後、柩が火葬場へ運ばれ火葬炉の前でお別れをしたのち火葬されます。なお、火葬場と式場が隣同士の場所で葬儀を行う場合、火葬中に精進落としを済ませることがあります。セレモニー会館を利用する場合には、骨あげのあと会館に戻って精進落としをするなど、精進落としを行うタイミングはそれぞれです。
火葬が終わったら、骨を遺骨に納める骨あげを行い、その遺骨を自宅に迎えます。
4.法要関係
- 初七日法要
- 四十九日法要、精進落とし
- 納骨法要
- 新盆(初盆)
- 一周忌法要
- 三回忌法要
初七日法要は、告別式に続いて行ことがあります。精進落としは、ひとつ前の「通夜終了まで」にあるとおり、火葬中、火葬後など行うタイミングはさまざまです。しかし、本来は四十九日法要が終わった後に行うものです。
納骨は、行う時期の決まりはありません。寺院等の意向や慣習などによりけりですが、四十九日法要とあわせて行うこともあります。死亡して初めて迎えるお盆は、四十九日法要が終わったあと初めて迎えるお盆のときに行います。一周忌法要は、死後1年目に、三回忌法要は死後2年目に行います。
5.相続手続きなど
- 健康保険・年金等の届出等(会社員の場合は10日~会社員以外は14日以内)
- 遺言書の有無チェック(ある、なしでその後の手続きが違う)
- 財産調査、財産目録の作成
- 相続放棄をする場合は、家庭裁判所へ申述(3カ月以内)
- 準確定申告(行う必要がある場合は4カ月以内)
- 相続税申告(行う必要がある場合は10カ月以内)
※ここでの期限は、死亡の事実をすぐに知った場合としてのものです。
健康保険や年金などの届け出は早めに行います。会社員の場合は10日以内に会社に連絡をして手続きをします。国民健康保険や国民年金の人は、年金事務所または年金相談センターへ届け出をします。市区町村役場の市区町村役場の国民年金窓口で手続きを教えてもらえます。
相続を行う上で重要なのは、遺言書があるのか、ないのかです。それによってその後の手続きが違うからです。この手続きの流れに違いについては「妻の困り度が違う!子供がいない夫が選ぶべき遺言書の種類」で詳しく書いてありますので、こちらをご覧ください。
もし、借金が多くあり相続放棄をしたい場合には、3カ月以内に故人(被相続人)が住んでいた地域を管轄している家庭裁判所に申述します。この期限が3カ月のため、その前に故人の財産を調査します。
4カ月以内には、死亡した人(被相続人)の確定申告を行います。そして、10カ月以内には、相続税の申告を行います。申告を行うには作成する時間が必要となりますので、専門家に依頼する場合には早めに依頼をします。
相続税の申告には、遺産分割協議書(誰が何を取得するのか)の添付が必要ですので、早めに財産の分け方を決めておく必要があります。もし、遺産分割が決まっていない場合には、法律で決められた割合(法定相続分)で分けたと仮定して納税額が算出されます。
特に、同居の親族が自宅を相続するなどの場合に利用できる、小規模宅地等の特例(20%の額で評価される特例=80%減)は、遺産分割協議書がない場合利用できないため(つまり、遺産分割がまとまっていないと利用できない制度)、予定外に多くの現金が必要になることがあります。
まとめ
死亡した最初の1年が特に大変です。死亡直後から葬儀の準備が始まり、終わったと思ったら四十九日法要や納骨法要、その間に戸籍謄本をそろえたり、役所に届け出をしたり財産の調査をしたり。そして、それらの遺産をどのように分けるのかも決めなければなりません。
行うことは多くあり、期限付きのものがあることを知っておきましょう。