「死亡した後まで一緒にいるなんて冗談じゃない!」と、“あの世離婚”を望んでいる妻は意外と多いもの。そんな妻の心の声、とってもよくわかります。夫は、妻も当然同じお墓に入ると思っているようですが、妻としては夫の祖先や両親と同じお墓に入るのなら、自分の両親のお墓に入りたい、子供達と入りたい、そう願う妻だっているわけです。
そこで今回は、そもそも夫と同じお墓に入らなければならないのか、実家のお墓に入れるのかなど疑問点に触れながら、お墓選びについてお伝えしていきます。
あの世離婚!夫と同じ墓に入りたくない
妻の今どきお墓選択
今でもそうですが、一昔前までなら必ずと言っていいほど、妻は夫の先祖代々の家墓に一緒に入るのが当然とされてきました。妻がそれを望まないとしても、言い出せる環境ではなかったこととお墓の選択肢が少なかったため、受け入れるしかありませんでした。それもそのはず、数年前まで葬儀やお墓などについて事前に考えておくことは「縁起でもない」とタブー視されていたのですから。
しかし、「終活」が話題になり葬儀やお墓の情報が多くなってきたことで、事前に考えることの必要性が浸透してきました。そのため、今では考えることへの違和感が徐々に薄れてきています。そして、核家族化、少子高齢化社会でもあることから、お墓の後継ぎ問題も後押し、「自分のお墓をどうしよう」と考える人が増えてきたわけです。
妻としては、知らない土地や知らない夫の祖先、まして嫌いな姑と同じお墓に入るなんて考えただけで憂鬱だし、死亡してまで家や夫に縛られたくない。だったら、自分の親や自分だけのお墓、自分と子供たちのお墓に入りたい、そう思ったとしても不思議ではありません。
今まで夫と同じお墓に入らなければいけないと思っていた妻にしてみたら、お墓や供養の選択肢が増えたということは、あの世で別れて暮らす、「あの世離婚」を考えてもしかたがないことでしょう。
良いかどうかは別として、今までとは違い、自由に自分のお墓を考えることが出来つつある環境が整ってきたということです。
夫婦は同じお墓に入らなければならないのか
夫婦が同居することは法律上義務ですが、死亡してもなお同居(同じお墓に入る)義務までは定められていません。慣習としてそうなっているだけです。
ちょっとだけお墓の歴史をたどってみましょう。
さかのぼること江戸時代。幕府がキリスト教の廃止を狙って、民衆に檀家になることを強制しました。キリシタンではないという証として仏教徒にされ、家単位で同じ宗派に属すことを余儀なくされたのです。その管理をお寺がすることになり、それが檀家制度の始まりでもあります。
とまあそういういきさつがあり、今まで家単位でお墓を設けそこに納骨してきました。しかも昔は離婚などできる時世ではなく、嫁は家に嫁ぐ者でもあったため、嫁ぎ先のお墓に入るのは当然という、そんな時代が続いてきたわけです。
だって、最近ですよね。「離婚」が当たり前になってきたのと、家督相続ではなく「平等」の相続になったのは。
ですから、慣習として同じお墓に入っていただけなので、必ず夫のお墓に一緒に入らなければならないというものではありません。とはいえ、古くから受け継がれてきている習わしが慣習ですから、そう簡単に新しい考えに世間一般が対応できるものではありません。
事前にご主人に直談判して了解をもらう妻もいますが、「どうせ夫が先に死亡するのだから、そのあと自分は好きなお墓に入るつもり」とひそかに心に決めている人もいるでしょう。
しかしながら、ひそかにあの世離婚を考えている方々にとっては、どのような選択肢があるのかを知っておきたいものですよね。ここからは、どのようなお墓があるのかについて見ていきましょう。
お墓の選択肢
1.実家のお墓に入る
お墓に入れる人を決められるのは、祭祀承継者です。それと、墓地の規約や慣習等にもよります。
もし、妻Aさんが実家のお墓に入りたいと思っていたとしたら、実家のお墓を継いでいる人が了解してくれて、墓地(お寺や霊園など)の規約に違反しないのであれば、Aさんは実家のお墓に入れます。
では、どのようなときに規約違反になるのかというと、あくまでも例えですが、愛人が入るとか友人が入るとか、そのような感じです。
墓地の規約内であって祭祀承継者がOKというなら、たとえ苗字がちがうとしてもそのお墓に入れるということです。もちろん、墓地の規約外であっても可能な場合がありますから、そこは確認が必要です。
ただし、慣習や親族の意向などもありますので、祭祀承継者が決めたのだからということだけで決められるわけではありませんので、その点は注意が必要です。
実家のお墓に入りたいと思っているのなら、祭祀承継者と親族の意向を事前に確認しておくことはせめてしておきましょう。
2.新しくお墓を設ける
実家のお墓に入らない場合は、新しいお墓を購入(契約)しなければなりません。そのときに考えなければならないのは、
- お墓の後継ぎをどうするのか
- 個別のお墓がよいのか、知らない人達と同じお墓でもよいのか
- 1人だけのお墓にするのか、子供達などとも入るお墓にするのか
- 供養をどう考えるのか
- 子供たちの負担や気持ちはどうなのか
です。
そもそも、後継ぎがいない場合には、「永代供養のお墓」を考えなければなりません。永代供養とは、一定期間お寺等が代わって供養してくれるお墓です。一定期間ですから永久ではなく、13年とか33年など供養してくれる場所によって違います。
そして次に、個別のお墓がよいのか、知らない人たちとまとまって入るお墓でもよいのかについて決めなければなりません。分かりやすいイメージで例えるなら、一戸建て、マンション、相部屋、どのタイプがいいのかということです。区画を区切った自分専用のお墓、部屋(納骨場所)は別々だけど1か所に集合しているお墓、遺骨が知らない人と一緒になるお墓(合祀)などいろいろなタイプがあります。
さらに、お墓を購入(契約)するとしても、1人だけのお墓にするのか、子供達も入れるお墓にするのか。つまり、1つの場所に何柱(何人という意味)入れるようにしたいのかということです。1柱しか入れないお墓もあれば、数柱まで入れるお墓もありますので。
忘れてはならないのは、供養をどう考えるのか、そして子供たちの負担や気持ちはどうなのかについてです。
これらのことを考えたうえで次のステップに進んだほうがスムーズです。次のステップとは、実際のお墓選びです。参考までに、簡易ですが永代供養墓の種類について見ていきましょう。
永代供養墓の種類、新しい供養の仕方
今では、さまざまなお墓や供養のしかたがあります。詳細は載せきれないため、別の機会にお伝えしていきますが、大きく分けると次のように、埋葬するタイプ、預ける(収蔵)タイプ、撒くタイプ、手元に残すタイプがあります。
a.個人墓・夫婦墓など
普通のお墓と同じように埋葬するタイプのお墓。最初から永代供養となっているお墓。
b.樹木墓
区画にある墓石の代わりに木を植えて埋葬するお墓や、大きな木の下に個々人が埋葬されたりするお墓
c.合祀墓
1つの場所に遺骨をあわせて埋葬するお墓。
d.納骨堂
寺院等に遺骨を預けるタイプのお墓。
e.散骨
海や山、大気圏、宇宙などへ遺灰を撒いて供養。
f.手元供養
遺骨そのものを加工してアクセサリーにしたり、遺骨の一部を専用の入れ物に入れたりして手元に置き供養。
このように、永代供養と言ってもいろいろな選択肢があります。それらを選択する前に必ず知っておいてもらいたいことがあります。お墓を考える上での注意点です。
お墓を考える上での注意点
夫と同じお墓に入りたくないという気持ちだけで、あの世離婚を考えるのではなく、現実の離婚と同様に子供のことも考えていかなければなりません。
供養される側の気持ちも大切ですが、供養する側の気持ちも考慮してほしいということです。それを無視してお墓を決めてしまうと、困るのは家族です。
親として、代々受け継いでいく「供養」や「祖先を敬う気持ち」を後世にあえて継がせることも必要です。その辺りも含めて、夫とあの世で別居するのかを考えていただきたいと思います。
父のお墓はこっちで、母のお墓はこっちとなると、供養する側も大変です。母としては、永代供養墓だからお参りに来なくていいと思っているかもしれませんが、子供の気持ちを無視した親心は迷惑なことかもしれません。
お墓選びは、現在の住まいのように、夫の親と同居する、夫婦だけで暮らす、離婚せず我慢して暮らす、離婚して精神的に自由になるというのと同じような選択です。
家族や親族も無関係ではありませんので、死亡した後の住まい(お墓)をどうするのか、供養される側と供養する側のことをよく考えて決めてほしいと願います。
まとめ
- 慣習で夫婦が同じお墓に入ることになっている
- 妻のお墓の選択肢は2つ、実家のお墓か新しいお墓
- 実家のお墓に入れるかどうかは祭祀承継者と墓地の規約次第
- 新しいお墓を考えるなら、後継ぎや誰と何処になどの課題がある
- 永代供養墓の種類や新しい供養の仕方はいろいろある
- あの世離婚を考えるなら、供養する側の気持ちも考える