「おひとりさま」の頼る相手が”誰か”で変わる対策と注意点

160731「おひとりさま」がイヤでも頼らざるをえない人・頼りたい相手頼れる身内がいない、身内がいても頼れる人がいないなど、通称「おひとりさま」の場合、若いうちはそれほど気にならなかったことが、年齢とともに気になりだす時期があるものです。親の死亡がきっかけだったり、友人の訃報があったり仲間内で話が出たときなど、みょうに気になってしまうものです。それがいつしか不安にかわることがあります。

しかし、おひとりさまの準備対策をする前に大事なことがひとつあります。「本当に身内がいるのかいないのか」。

「身内がそもそもいない」場合と、「身内はいるけれど頼れる人がいない」というのではまったく違うということです。今回は、準備対策の前にどうしたいのかを明確にしておきたい理由や、ケースによっておこる事例についてみていきましょう。

 

「おひとりさま」の頼る相手が”誰か”で変わる対策と注意点

 

私のところへ相談に来る、自称“おひとりさま”の方に最初に聞くことは、親族関係についてです。先にも書いた通り、本当に天涯孤独なのか、身内はいるけれど単に頼りたくないだけなのかなど、その人の親族関係によって準備対策が違うからです。

ですので、まずはそこから明確にしておく必要があります。

  1. 身内がいるのかいないのか
  2. 身内がいたとして、その身内と付き合いがあるのか
  3. 付き合いがある身内がいる場合、頼れそうなのか、なぜ頼りたくないのか
  4. そもそもその身内は相続人なのか
  5. 身内がいない場合、誰に依頼しようと思っているのか

など、ケースによってさまざまです。

 

1.身内がいるのかいないのか

“おひとりさま”とひとえにいっても、頼れる身内がいるのかいないのかではそもそも違います。「頼れる人がいない」と「頼れない」と「頼りたくない」では全く違いうということです。

頼れる人がいない場合には、専門家など第三者に依頼をするしかありませんが、身内がいる場合は、身内に依頼したほうがよいケースもあるからです。なぜかというと、身内は「親族」だからです。

例えば自称おひとりさまのAさんが入院することになったとしましょう。このとき病院から保証人や親族の同意を求められます。そのときに、Aさんが頼りたくない親族がいるとしても、親族がいるのならその親族にサインをもらってくるよう求められるからです。

友人や知人、専門家の先生にサインをもらうことはかなり難しいものです。そもそも身内がいるのに第三者で病院が納得するかどうか、それと第三者がサインするケースがあまりないという現状です。

なぜかというと、保証人になるということは、金銭保証をすることだけではありません。専門家は金銭の保証人になることは実務上まずありません。医療の同意に関しては、手術で失敗する可能性などその人の身に何か起こったときに関する同意ですから、身内でない以上、そのような責任を専門家がとることも到底できません。

そのため、遠い親族がいる場合、仮に専門家がAさんから依頼されていたとしても、専門家は親族にサインをもらうなどしなければならないことがあるからです。

このように、「親族」という存在は大きいため、身内がいるのかいないのかは、かなり重要な要素になってくるのです。では、まったく身寄りがいない場合はどうでしょう。頼りたくても頼れる身内がいないのです。このような場合は、また別の意味でかなり問題です。保証人や医療の同意などの事情が生じたときに、引き受け手がいないという問題があります。

近年増えてきた、生前契約を行う団体が保証人を引き受けることありますが、使い込みなど不正が発覚したり、トラブルで裁判に発展してしまうケースもあるため、「保証人」というキーワードだけでそこに救いを求めるのは危険なこともあります。

実際には、受任した専門家がその時々で試行錯誤しながら、本人のために行動して何とかしているのが現状です。

 

2.頼りたい身内がいる場合

身内がいる場合、その身内とどのような付き合いがあるのか、まったく付き合いがないのかによって違います。そして、その身内は相続人なのかどうか。

例えば、本人(女性)には兄と姪がいるとして、この姪とはたまに交流があるとします。ですので、本人としては将来、姪にいろいろサポートしてもらいたいと思っています。ですがもし、自分が姪の立場だったらどうでしょう。

160731「おひとりさま」がイヤでも頼らざるをえない人・頼りたい相手_相続関係図

よくあるのは、「ちゃんと私に叔母さんの財産をくれるならいいよ」というケース。本人が遺言書を作成しなかったら、相続人は兄と弟です。姪は相続人ではありません。仮に兄が本人より先に死亡したとしても、相続人は弟と姪と甥です。姪が叔母の面倒を見たからといって、財産が多くもらえるとは限りません。

もし、どうしても姪に面倒を見てもらいたいと思うのなら、遺言書を作成して、姪に財産がいくようにしておく配慮が必要です。

 

3.頼れる身内がいない場合

ではさきほどとは反対に、身内はいるのだけれど頼れる人がいないケースはどうでしょう。この場合、もし遺言書を作成しなかったとしたら、何も支援してくれないかもしれない身内に、財産だけがいくことになるのをどう思うかです。

それが構わないのならそれでよいのですが、もし嫌だと思うなら、遺言書を作成し、自分で財産の行方を決めておく必要があります。

そして、頼れる身内がいないということは、もしも足腰が不自由になってきて財産管理がままならないとか、1人で過ごしているのが不安で定期的に見守りをしてもらいたいとか、認知症になってしまったら誰に面倒を見てもらおう、自分が死亡したあと誰に葬儀をおこなってもらおう・・・などという不安や問題課題があるわけです。これらの対策についても考えておき準備対策をしておかなければなりません。

これらの生前対策については、「おひとりさまの4点セット」で別途詳しく説明していきます。

 

まとめ

頼れる身内がいるかどうかで、保証問題も頼れるかどうかが関連してきます。頼れそうな身内がいる場合には、その身内が引き受けてくれるかが重要です。もしその人が相続人ではない場合には、財産を残す条件で依頼できるかもしれません。反対に、身内がいても頼りたくない場合には、自分の財産を自分のために使ったり、渡したい人に財産を残すなど考えたりしておく必要があります。

そして、引き受けてくれる身内がいない場合や、頼れる身内自体がいない場合には、専門家などに今後のことを依頼しておくなどの準備対策が必要です。何を、どこまで、どのように準備すればよいのかを知ることが大事ですが、その前に、まずは自分の老後や死亡後のことに目を向けて、考えてみましょう。

 


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